小樽100年プロジェクトセミナー開催2019/05/27 17:12

小樽100年プロジェクト・セミナー開催

 先週の土曜日24日に旧三井銀行小樽支店を会場に「小樽100年プロジェクト・セミナー」が開催されました。主催は「小樽100年プロジェクト・セミナー」実行委員会、共催が小樽市、また、市内の28市民団体ものご後援をいただいての開催です。

 少し長くなりますがおつきあいください。


このブログをお読みいただいている方はご存じの通り、私も参加している「朝里にまちづくりセンターを創る会」で昨年開催した建築史がご専門で長年小樽の歴史的建造物を研究、見守られてきた駒木定正先生の講演会でのお話が発端となり、多くの市民が小樽のアイデンティである色内地区の旧銀行街の建築物群を保存活用していこうという機運の盛り上がりが生まれていました。ちょうどその時、「全国町並み保存連盟」の総会が小樽で開かれることになり、その分野の泰斗が小樽に集まられるこの機会にセミナーを開いてより広く市民や関係者の皆さんに理解を深めてもらおうということになったのです。

私はその街並み保存連盟の主催する「全国町並みゼミ」に2年前から参加させてもらっていた縁もあり、スタッフの一人として関わらせてもらいました。

 準備や会場の手配など世話人や市職員の皆さんの熱意で無事当日を迎え、セミナーには旧三井銀行のホール定員の120人を大きく超える170人以上の方が詰めかけてくれました。改めて市民のこれら歴史文化や建築物群への愛情と熱意を感じることができました。

 

 開会にあたって駒木先生から本セミナーの開催の主旨は

1.       色内地区に建つ主要な銀行建物群が耐用年数を大きく超える築後100年を迎えていること。これらの保存、活用の道を開くこと

2.       2022年には小樽市政施行100年を迎える。これからの小樽の歴史文化について100年を見通した大系をみんなで考えていくべきこと

それらを官民で進めていくきっかけとしたいとの説明です。

 

 全国町並み保存連盟の福川裕一会長のご挨拶では、過去2回の小樽で開かれた「全国町並みゼミ」の意義についてお話しがありました。


 迫市長の歓迎メッセージは、ここに来て歴史文化に関わる市民が主役の活動が活発になっている事、これは日本遺産の認定と無関係ではないこと、これからこうした活動の輪を広げていくために今日の話を聞いて一緒に考えていきたいというお話だったと思います。

 

 さて、本題の西村先生のご講演です。西村幸夫先生は現神戸芸術工科大学教授で、元東京大学副学長。専門分野は都市計画、都市景観計画、都市デザイン。若いときから参加されていた「全国町並みゼミ」の精神的学術的支柱です。

「全国から見た小樽のまちづくり運動と未来」と題してお話しされました。

まず、外からの客観的視点から小樽運河の保存運動をふりかえり、その価値を「まちづくり運動そのものの原型」となったことをあげられました。


 市民からの働きかけにより公共事業をよりよいものへ変えることの可能性が生まれた、ということです。当時は官民共同などという発想はなかったのですね。

行政と市民の意見をすりあわせ、より良いものを生み出す、解決策を生み出すきっかけとなり得ることを全国に示したという意義があったということでした。

 そして、その成果を持って過去から未来へ続く長い歴史の中の一瞬という現在に責任を持つことが大事で、その責任を果たすべきとき「その時」が自分の前にやってきたときに毅然とその役割を果たせるように普段から備えること、を小樽運河を守る会の故 峰山冨美さんを例に述べられました。



 続いて福岡県八女市のNPO法人まちづくりネット八女の北島力さんからは「歴史地区の持続するまちづくり 伝建制度を磨き活用する」と題し、お話しくださいました。

 小樽の建造物群を保存活用するためには市だけではとても無理があります。そこで様々な国の補助支援制度を活用することが必須です。北島氏は八女市での文化財保護の担当職員としてそれらの国の制度活用について市の行政面から携わってきた経験をお持ちの方です。

 私が前々回の市議会で国の制度導入について質問した部分について具体的に経験されてきた方ですので大変興味深く聴かせていただきました。

これら国の制度は何種類かあるのですが、ポイントは対象となる建物等をエリアで指定するので、その地区の住民のみなさんの理解、合意形成をいかに進めるかという点にあるそうです。

 指定地域になることでの税制面での優遇や補助制度もあることなどを市職員だけでなく、民の協力もあれば進みやすいそうです。これら具体的手法について具体的なお話を聞くことができました。小樽市の職員も数多く来ていらっしゃいましたので、進めるとなれば参考になったことと思います。「文化財の保存と活用にむけて問われる市民と行政の協働」が大事になると感じました。

 

 その後は、駒木、西村、北島3氏による鼎談です。

駒木先生からの次世代への継承や国の制度をとりいれた先、歴史を活かしたまちづくりをしていく上での心構えはというような質問がだされながら進みました。

西村先生からは

    洋風建築がこれだけ集中して残っているのは全国的にも本当に珍しい

    それが日本人建築家によるものだということも

    小樽の町を点としての建築だけでなく、港や街路が果たした役割も含めて歴史重層的な都市全体の姿を大きなストーリーとして捉えるべき。

北島氏からは

    八女と小樽の共通点は商人が活躍したまち。商業施設「なりわい」の歴史を残したいというのは同じではないか

    国の制度はどれか一つだけということはない。ダブっても可能だからチャレンジすべき。

    制度として優れているのは伝建制度。歴史まちづくり法は国交省なので大きな建物には有効か。

    石造、RC構造の修復技術が蓄積されていない。お金もかかる。専門家を事前に育成、研修等行って準備がいるのでは。

等々貴重なご意見をいただきました。時間が圧倒的に足りなく、もっともっとお聞きしたかったです。

 後ほどに村先生にセミナー感想等についてお聞きしました。先生はまちづくりの本家本元の小樽での講演ということで、常になく緊張しておられたそうで、前夜一睡もせずに資料等を用意されたそうです。また、当のセミナーでは聴衆のみなさんがただ多いだけでなく、本当に真剣・熱心に聞き入っていた様子を感じたそうです。

 セミナーの最後にはこの日のお話を「小樽宣言」という形でまとめられました。 


 今セミナーで西村先生からは小樽の市民運動の歴史を背景にこれからの保存活用の動きの心構えを学び、北島氏からはより具体的な国の制度活用の筋道やその後の官民共同の方法論について学ぶことができました。本当にありがとうございました。

 

 その後の交流会には多くの方が参加いただき、熱心にセミナーの続きを3人の先生方を中心に議論されていました。 


 また3次会は堺町の出世前広場に移動。「夜鍋談義」と称し、連盟の理事のみさんと小樽の参加者たちが遅くまでさらに交流を深めました。

 

 翌日26日は全国町並み保存連盟の総会が運河プラザで開かれました。連盟の理事のみなさん2汚名ほどが、総会に先駆けて炎天下、駒木先生の案内で市内の歴史的建造物や町並みを見て回りました。前日のセミナーでの講演を実地に確かめる場となりました。

 連盟のみなさんが運河でコスプレの方と一緒に記念撮影。 

 小樽市的に見ると今回のセミナーを市が共催で参加してくれたことに大きな意味があると思います。西村先生がおっしゃっていた小樽市が運河保存運動の経験から培ってきた官民共同のまちづくりが活かされるのはこれからだと感じる出来事です。



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