小樽市議会臨時会 高島観光船訴訟で賠償金5600万 ― 2021/10/28 22:18
10月28日(木)、小樽市議会は、2021(令和3)年第1回臨時会を開き、令和3年度一般会計補正予算案(高島観光船訴訟の判決に基づく損害賠償金等の支払いに係る)について審議し、全会一致で原案通りに可決しました。
市が本来は条例上、観光船事業に使うことを許可してはいけない場所(高島漁港内)に誤って許可を出してしまい、そのため事業者が観光船事業実施にこれまでつぎ込んだ施設設備費用や広告費等を賠償することを求めた裁判になり、この度、市に対してそれら損害賠償金5,578万8,060円に遅延損害金9,743,805円を加えた65,531,865円という判決が出たものです。市は判決内容を受け入れ、控訴しませんでしたので、結果、そのための訴訟関係経費4,620,000円を加算した合計7,015万1,865円を支払うことになりました。
今回の臨時議会での提出議案はその支払いを財政調整基金からの繰入金を財源として予算措置をするというものです。
私たち立憲・市民連合としてはこの予算案は当然の帰結と考え、可決に賛成しました。というのは、確かに判決文としては、おおよそ妥当なものですし、また、控訴をしなかった市長の判断も妥当だと判断したからです。 従って、予算案には賛成しましたが、どうにも納得がいかない、憤(いきどお)りの感情を抑えられませんでした。
というのも、このような事態に至ることを私たち議会は再三に渡って当時の森井秀明前市長に指摘していたからです。それにもかかわらず森井前市長は平然とそれを無視し、コンプライアンス委員会にその許可が「違法である」と断じられるまで、事業者の使用を認め続けていたことが今回の賠償金額を大きくさせているのです。
そして、最も肝心な点はこの観光事業のオーナーが前市長の後援会長だったことです。そのオーナーもしくは前市長が当時の市役所の許認可担当者の判断に直接間接的に何らかの影響を与えたのではないかという当時の議会議論は残念ながら決定的な証拠を示せないままです。
しかし、この5600万円の賠償金を支払ったままにすることは市民の皆さんから頂いた税金を使うということです。それは許されることではありません。市議会議員として税金の使い道についてし碇と市民に納得のいく説明を尽くす責任があります。
そこで考えられるのが「求償」という制度です。これは辞書によると『弁済をした一定の者が、他人に対し賠償または償還を求めること。』です。今回で言うと市が事業者に支払った5600万円の賠償金は前市長の責任によるものなのでその分を前市長に賠償を求めるということです。
森井秀明前市長はその違法性を認めず、「議会の心配はご無用」「全ての責任は市長である私にある」などと本会議の場で言っていました。今こそその言葉を形にしてもらうときです。よって、前市長に求償を求めていきましょう。というのが我が会派の主張です。
高島漁港内に建てられた観光施設です。(2017年5月)
同じ建物(2018年6月)。前市長が違法性を認めない間に外壁が増築されています。この工事費も前市長の責任でしょう。
市長の提案説明では、「今後、前市長に責任が問えるかどうか慎重な検討が必要なことから、最終的な判断までには時間がかかるとし、判断がつき次第、議会で報告する」とのことですので、その判断を待ち、再度、議会や司法の場等でこれまで不明な件も含めてできるだけ解明し、市民のみなさんにわかりやすく示してまいりたいと思います。
以下、本会議での私の討論の原稿です。興味のある方はお読みいただけると上記の内容がもう少し詳しくわかるかなと思います。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2021/10/28 臨時議会 討論 立憲・市民連合 佐々木 秩
立憲・市民連合を代表し、この補正予算案に賛成の立場で討論します。
この予算案は当然の帰結です。確かに、判決文としては、おおよそ妥当なものだと思いますし、また、控訴をしなかった市長の判断も妥当だと思います。従って、予算案には賛成します。賛成はしますが、どうにも納得がいかない、憤(いきどお)りの感情を抑えられないのです。
そこで、この予算案に一つお願いがあります。この歳出の原資は税金です。そう思ったとき、2010 年の「高額療養費未請求問題」を思い出しました。当時 も多くの議論を重ねたそうですが、結果、小樽市の支出については税金を使いませんでした。当時とは状況が違うのは理解しますが、市民が到底納得ができ ない支出を小樽市がしなければならないという点は同じです。
市長も同じ思いとは思います。ですから、提案説明でも求償について言及したのでしょう。
法的に難しいのは十分理解できますが、1%でも可能性がある限り、全額、森 井秀明前市長に求償すべきではないでしょうか。それは、実質的に1円でも小樽市が支出しなければならない金額を減らす努力の具体的な形だからでもあります。
単純に全額求償が難しいとしても、全額訴える中で、一部認められたとしてもそれは良いのではないでしょうか。例えばこのような視点はどうでしょう。
判決文を見ると小樽市が賠償をしなければならない項目については、2016 年 6月1日以降に契約が締結されたものとなっています。司法は時系列を判断の基礎にしているのがわかります。
そうなのであれば、小樽市議会は、2016年9月6日からの小樽市議会第3回定例会で条例違反であると、徹底的に追及しました。それにもかかわらず、森井前市長がこの時点で、処分の違法を認めず、許可の取消も行わなかったということは、判例における国家賠償法上の求償権規定、「重過失」の要件である、「通常人(にん)に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然これを見過ごしたような、ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態」と言えるのではないでしょうか。
そして、小樽市事務専決規程第 5 条第 1 項第 1 号にある「市議会に関係のあるもの」の決裁権者は「市長」です。少なくとも 2016 年 9 月 6 日以降の損害 については、 重過失ある市長の不作為によって損害を拡大させたと考えることは可能ではないでしょうか。結局、森井前市長の在任期間中は処分の取消を 行わず、その遅れによって損害を拡大させているのです。
判決文の中を見ると継続的に支出をしていると思われる宣伝広告費は 500 万 円強、2018年 6 月からの船舶係留費は、200 万円弱、とあります。市長の不作為によって損害を拡大させた金額は一定程度存在するわけです。これらは求償 が認められる可能性があると思います。
この臨時会に臨むにあたって議会の議事録を改めて読み返しました。当時、私たちも含め、多数の議員が強い言葉で森井前市長に迫っていました。それは、今日の事態を容易に想像できたからです。しかし、当時の強力な市長権限の前では、事態を動かすに至らず、無力感さえ感じたのを覚えています。
一方、権限のある森井前市長は、議会で「責任はすべて自分にある」と言っていました。その言葉が本当なら、この損害賠償相当額の寄附の申出があってもいいのではないかと思っています。しかし、そんなことは現段階ではないからこそ、この予算案になったのでしょう。私たちも迫市長と同じく義憤にかられ、以上のような提案をさせていただきました。
今後、求償等について、市長提案では市が判断の上、議会に報告とのことですので、その際にさらに議論を深めていく所存です。
法律上の制約と司法の判断もありますから、市長の権限が及ばない部分も大きいことは十分わかっていますが、そもそもの「高島観光船問題」の責任の所在を明らかにし、市民のみなさんが納得いくよう、最大限の努力をお願いしま して立憲・市民連合の討論とします。
コメント
トラックバック
このエントリのトラックバックURL: http://t-sasaki.asablo.jp/blog/2021/10/28/9436183/tb
※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。
コメントをどうぞ
※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。
※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。