歴史文化町並みについてのイベント続く2019/03/03 15:02

小樽の歴史文化、町並みについてのイベント続く

 小樽の街の個性、他の街には見られなくなってしまった歴史を感じる風景を大事に保存し、そして活用していこうという主旨で最近特に盛り上がってきている事を実感しています。

 小樽では運河保存運動の後、一時はその機運が高まり、全国に先駆けて景観条例等が施行されるなどしました。そんな流れはやがて収まりというか萎み、つい最近まではほとんど顧みられていなかったように思います。

 しかし、ここに来て北前船による日本遺産認定、小樽市歴史文化基本構想の策定などの動きが出てきて、その中で様々な市民を対象にした講演会やワークショップが開かれるなどしたことにより、市民のみなさんの中にも改めて小樽のまちにある歴史的遺産の数々の価値を再認識してもらえてきているのではないかと感じています。

 私も数年前に議会で「小樽市も日本遺産認定をめざすべき」との提案をし、市がそれに応えて動き出してくれたという関係で非常に関心を持って、この歴史文化関係の話題に取り組んでいるつもりです。

 

 

 そんな中、去る2月24日の市立小樽図書館まちづくり研究講座『小樽の歴史的建造物と未来』と3月2日の小樽市総合博物館で開かれた『文化遺産フォーラム 文化遺産といきるまち』を拝聴してきました。どちらも参加者が定員を大きく上回り、市民の関心の高さが伺われました。

 定員50名のところ、90名以上の方が詰めかけました!


 まずは市立小樽図書館まちづくり研究講座『小樽の歴史的建造物と未来』について

講師は北海道職業能力開発大学校特別顧問、小樽市文化財審議会会長の駒木定正先生です。

 実はこの私のブログ昨年11月8日の回で報告しました、同じく駒木先生が講師で開催した「まちづくりセミナーin朝里」を聞いていただいた図書館職員の方がその内容に感激し、駒木先生に即、講演を依頼されたのだそうです。

 よって、ご講演内容はそのとき報告した内容に重なるところがありますので、詳細はそちらをご覧いただければと思いますが、もちろん先生のことですから、当然、内容はヴァージョンアップしていました。

1.    近代から始まったまち・小樽  

2.    主要な近代の歴史的建造物

3.    近代建造物の保存技術の現状

4.    小樽の歴史的建造物の未来

といった主な項目に従ってのお話しでしたが、やはり、この小樽に残る近代建築群が今、果たす役割とそのためにはしっかりと保存する技術が確立されるべき事、そして国の施策を活用していくこと。そのための市と市民の役割があること等をお話しくださりました。

 駒木先生の思いのこもったご講演。


 特に国の施策として『歴史まちづくり法』という法に基づく様々な支援が大変有効であることを強調されていました。厳しい財政運営が続く小樽市にとっては大事なご提案だと思いました。

 市職員やOBの方も多数いらっしゃっていたので、ぜひ認定を実現してほしいものです。私も議会からこれとあわせて文科省の文化財保護法に基づく支援の申し出を引き続き実現できるよう働きかけていくつもりです。

 

続いて小樽市総合博物館で開かれた『文化遺産フォーラム 文化遺産といきるまち』です。

このフォーラムは市教育委員会生涯学習課が企画したものです。3年をかけて策定を進めてきた『小樽市歴史文化基本構想』案が満を持して公開され、それを機にこの構想をどう活かしていくのかというテーマで開かれたのがこのフォーラムです。市総合博物館では同じテーマ『文化遺産といきるまち 小樽市歴史文化基本構想と8つの視点』で企画展を開いていました。

   国の指定も受けた松前神楽関連 の展示です。

   小樽の自然も遺産として扱われます。

運河保存運動も市民の力として位置付けられます。


フォーラムの基調講演では文化庁地域文化創成本部、文化財調査官の岡本公秀氏から「文化遺産を守り、活かしていくためには」というテーマでお話しがありました。

      歴史文化基本構想を作ることになった背景として地域の人口減少がある。歯止めをかけるためには地域の個性を残していくことで地域の振興へつなげるという発想。

      行政が指定する文化財は年々増えているが予算は増えていない。地域に残る未指定の文化財まで手が届かず危機にある。行政だけで未指定まで守るのは無理。

      そこで文化財というものを幅広く捉えて、社会全体で支えて保存・活用していこうということ。

      それでいくと文化財の定義は相当広い。文化財とその周辺環境が織りなす地域の魅力そのものというおさえ。

      その様々な例を示す。兵庫県養父市の養蚕と暮らしの例、丹波篠山市の集落ひとつをホテルにする例など

      文化財保護のための資金調達法 持続可能な自立した文化財保護のために

      文化財保護制度の見直しでこの構想が「文化財保存活用地域計画」に変わり、法律に位置づけるようになること。

 などと私は理解しました。感想としては、せっかく多くの人の努力の末に策定する「小樽市歴史文化基本構想」ですから、地域型日本遺産認定の条件クリアのためだけでなく、しっかりとまちづくりに有効活用していくことや、作って終わりにしないことが大事ということです。

  岡本氏の基調講演。小樽市の基本構想をほめてくれていました。


 また、一方では国ができなくなってきたから地方でやれば良いでしょ。という発想だけであれば、地方も厳しい状況にあるのだからどうにならないので、しっかりと国の支援体制を示してほしいということや、せっかく作った構想が早くも法律改正で見直さなくてはならないのかという疑問もわきました。

 

続くフォーラムでは 基調講演の岡本氏の他に

      福島市石川町の仲田茂司氏が構想の活用例として「人馬一体の地域再生」について

      江差町教育委員会学芸員の宮原浩氏が「『江差町歴史文化基本構想』の策定とその後」

      Zenibako Style Shop &Gallery店主 白鳥陽子氏が「歴史文化遺産を活用し魅せたい小樽」について

      札幌大学教授で小樽市歴史文化基本構想策定委員会委員長の川上淳氏が「「小樽市歴史文化基本構想」の特色」について

石川小樽市総合博物館館長の司会のもと、お話しをされました。

5人のみなさんのお話。残念時間が足りない!江差の宮原さんの話もっと聞きたかった!


印象的な話としては

・ このテーマでこんなに多くの市民が集まるまちはな い。

      外からの目で見れば、小樽市は歴史を大切にしてきたまちでその証拠に全道一の規模で学芸員を配置し活かしている。

      構想には各学校が出している記念誌や学級日誌が貴重な資料になったこと。

      構想に示されている文化遺産群は今後データベース化し、公開。その後も随時追加していくこと

      文化遺産の磨き上げは観光客向けだけだと地元の人はついてこない。市民に身近になることが大事。

      道内で唯一地域型日本遺産認定されている江差町の構想でも関連遺産群の部分はまだできていないが、小樽はそこまで踏み込んで策定していること。

      江差町では日本遺産のストーリーは関連遺産群のひとつとして抑えているという。ということは小樽市もここに示された8つのストーリーの内のひとつが有望なのか?

などでした。

 最後に、このフォーラムの開会挨拶で迫市長がこの構想策定に最初に関わった故石神主幹の功績について語っておられました。私も当初石神主幹に様々な基本的な教えをいただいていました。石神氏の博識とご努力なくしてこの構想策定には至らなかったとの思いを巡らしながら感慨深く今日のフォーラムを聞いていました。


   迫市長の開会の挨拶です。こうした方面にも深い理解があることを言葉の端は市に感じられます。